鍼灸師の独り言

PDF版 2005年 コラムから
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中期  私の治療室から(こちらをクリック)
後期  陰陽の世界から(こちらをクリック)


NO.1    2005年 3月
NO.2    2005年 4月
NO.3    2005年 4月
NO.4    2005年 5月
NO.5    2005年 6月
NO.6    2005年 7月
NO.7    2005年 8月
NO.8    2005年 9月
NO.9    2005年10月
NO.10    2005年11月
NO.11     2005年12月


陰陽の世界から (その5)
陰陽と治療概念(3)

前回母子関係・拮抗関係から治療概念が成り立っているところまでお話しました。今月は、これをどのようにして決定し、治療に結びつけているかお話したいと思います。
経絡治療は脉診流と言われるほど脉診を大切にしています。それは診療に当たって診断・体の変化を的確に把握するためのもっとも重要な情報をそこから得られるためにほかなりません。この脈診を軸に四診法を駆使し治療法が決定されていきます。脈診は両手関節(橈骨動脈)に片側3本・両手で計6本の指を当て、それぞれを比較していきます。そして望・聞・問診で得られた情報とあわせて「証」として決定されます。つまり「証」とは、診断であり治療点を示唆するものとなります。このことから「随証療法」といわれます。
五臓六腑、特に五臓を中心に母子関係・拮抗関係を捉えて診察・診断していくのが経絡治療の特徴といえるでしょう。
ここからお分かりいただけるかも知れませんが、五臓・六腑を整えていくことで生命力の強化・免疫力の向上につながります。そして整えられた体は、自らの力で病を癒していくのです。皆さんも生命力・免疫力に期待して見ませんか。
次回は「鍼と針について」お話してみたいと思います。


陰陽の世界から (その4)
陰陽と治療概念(2)

前回は一日における五臓の順序についてお話しましたが、今回は四季における五臓の配当について述べ、治療法則にまでお話できればと思います。
まずは四季の五臓の配当から始めましょう。
「春」は寒く暗い冬の陰の季節から陽気が出てくる時期になります。つまり「陰中の陽たる肝臓」で、まさに木々が春枝を伸ばし葉を茂らす働きが肝臓の働きに例えられます。
「夏」は明るく暑い季節で活動的なイメージとなります。つまり「陽中の陽たる心臓」の季節です。
「秋」は暑い季節から冬へ向かう準備の季節で、木々が葉を落とし寒い冬に備える姿と考えるとお判りいただけるでしょう。つまり「陽中の陰たる肺」がそれに当たります。
「冬」は最も寒い時期にあたり、「陰中の陰たる腎」つまり、陽中の陽たる「心」との対比でもお判りいただけるでしょう。
最後に「脾」が残っています。この「脾」は少し特殊で、各季節にある土用に関係が強く、つまり各臓器とそれぞれ強い関係を持っています。その中で「盛夏」に配当されています。何故と思われますが、私の能力不足のためここではご容赦ください。
このように春から順に「肝・心・脾・肺・腎」の順に並びます。よく見ますと一日の順序に同じですね。
大分前置きが長くなってしまいましたが、ここらで治療概念の話に移りましょう。
前回と今回と長く五臓の順序についてお話してきましたが、それはこの順序が大変大事になるためです。
まず、時計をイメージしてください。時計の数字をイメージし、「12時は肝、2時は心、5時は脾、8時は肺、10時は腎」の五角形をイメージしてください。例えば、肝と心、心と脾、脾と肺、肺と腎は母子の関係で前の臓器が親に当たります。更に各対角にあたる肝と脾、心と肺、脾と腎、肺と肝、腎と心は拮抗関係に当たり、前の臓器が後ろの臓器を押さえ込む関係に当たります。(但し、拮抗だけでなく調和の関係でもありますが、ここでは説明の関係上拮抗関係で説明します)
この母子関係、拮抗関係から治療法則が成り立っています。また、長くなってしまいましたので、ここでヒントの例えをお話して今月のお話を閉じたいと思います。
“母子関係”から。子供が元気なく、病気になったりすると、親・特に母親は大変になり次第に元気をなくしていきます。この関係が五臓の母子関係にもそのまま当てはめられます。
この続きは次回といたします。


陰陽の世界から (その3)
陰陽と治療概念

前回まで陰陽の相対性についてお話してきましたが、その相対的な概念がどう治療(臨床)に結びついているのでしょうか。
少し判りやすくお話してみることにします。
前回の話の中で、内臓の陰陽についてふれました。この内臓の陰のもの、すなわち“肝・心・脾・肺・腎”について考えてみます。漢方においては陰の臓が主体となります。
それでは個別に考えて行きましょう。
まず、体の上方に位置している「肺と心」からお話しましょう。この二つの臓器は、体の上部に位置し、臓器の中では「陽」に属します。
更に、この二つの臓器を見ますと、「肺は陽中の陰」「心は陽中の陽」となります。その働きを考えてみてもお判りいただけると思います。「心臓」のほうがより活発に動いていますよね。つまり、肺に比べより動的ですね。
次に下部に位置している「肝・腎」についてみてみましょう。「腎臓」は泌尿器系をイメージされ(漢方ではそれだけではありませんが)、水に関係する臓器です。つまり、より陰的な働きとイメージになります。このことから、「腎」は「陰中の陰」となり、「肝臓」は「陰中の陽」となります。
最後に残った「脾」は中央を意味します。(但し、「脾」は現代医学で言うところの「脾臓」とは全く違い、消化器系を支配する大きな力と考えてください)
今まで各臓器を陰陽で見てきましたが、これをもう少し別の方向から見てみましょう。
生物はすべて太陽とのかかわりで一日のリズム、一年のリズムを刻んでいます。
まず、一日のリズムから見てみることにしましょう。「朝」は「夜」から太陽が昇ってきて「朝」を迎えます。つまり、「夜」は陰ですから「陰から陽」へ変わる時間帯と言えます。そうしますと、「陰中の陽」つまり「肝」になります。
次に、「昼」は「陽中の陽」になりますので、「心」、「夕方」は「陽からだんだん日の沈む陰に」移行しますので「陽中の陰」たる「肺」になります。
残った「腎」は「陰中の陰」ですから「夜」となりますね。
もうひとつ残っていますね。そうです「脾」です。これは少し理論的に難しいものですので、ここでは「昼の暑い時間帯」をイメージしてください。太陽が真南に位置する「南中」にあたります。
これで、朝から夜に渡って「肝・心・脾・肺・腎」の順番になります。そしてこの順序が治療における大事な原則につながって行きます。
長くなってしまいましたので、この先の話は次回とさせていただきます。


陰陽の世界から (その2)
陰陽の相対性

前回の話で、「陰陽は絶対的ではなく、相対的ですよ」と言いました。少し相対的であることの実例を挙げましたが、今回は、更に具体的にお話してみたいと思います。
まずは、人の体を陰陽で考えて見ましょう。
人体では上が陽、下が陰となります。これは太陽の陽が当たるところを陽、日陰になる部分を陰とします。と言うと、もっとはっきり分かるのが、背中が陽、お腹が陰となります。これは四つんばいになった姿を思い浮かべていただければ、お分かりになると思います。
更に人体の体表が陽で内部が陰になります。
これらを総合的に考えますと、胸は陰であり、また、上下からは陽になります。このように同じ部位が見方の違いによって陰にもなり、陽にもなるのです。
この陰陽の概念を内臓、つまり五臓六腑に置き換えてみましょう。五臓が陰、六腑が陽になります。陰臓たる肺臓は陰臓の中では、陽の臓器になります。このように、体はすべて陰陽に分けられます。そしてこの陰陽の歪み・不調和から病へと変わっていきます。
人によって右側だけが痛くなったり、違和感を覚えたりしますが、これは陰陽の不調和によってその支配領域に反応が出るためです。この反対もあります。「右利きなのにどうして左が痛くなるんでしょう」と良く聞かれますが、これが答えとなりますね。
次回はこの陰陽概念が臨床にどうつながっていくのか、お話してみたいと思います。


陰陽の世界から (その1)
雨は何故ふるのか

東洋思想の陰・陽については、映画陰陽師(おんみょうじ)の公開で少し皆さんに知られたと思います。その中で使われていた「陰陽五行」と言う言葉は、私たち経絡治療を行うものにとって大切な基本原理となっています。
今回は、まず「陰陽」についてお話してみたいと思います。
東洋思想の中にある「陰陽」とは、絶対的なものでなく、相対的な捉え方をするものです。陰とは、静的なイメージ、陽とは、動的なイメージを現します。例えば、夜と昼、女と男等です。夜の中にも朝に近い夜もあれば、真夜中もあります。女性の中にも、男っぽい女性もいれば、女性の中の女性もいます。これらを陰中の陽とか、陰中の陰とか呼びます。
また、肺は陰の臓器ですが、陰の臓器の中では陽に属します。男女は絶対的ではないかと思われている方もおられるでしょうが、昨今の情勢を見るとき、相対的であることがお分かりいただけるでしょう。このように相対する概念を「陰・陽」に分けて考えるのが東洋思想といえます。
前置きが長くなってしまいましたが、では、雨は何故ふるのでしょうか。
「そんなこと決まっているじゃないか」と言われるでしょう。子供の頃から学校で勉強してわかっていることですね。つまり、雨の作りだされる原理は知っているのです。
しかし、どうして高気圧・低気圧が出来るのでしょう。「決まっているじゃないか。気圧の高いところが高気圧で、低いところが低気圧さ」
確かにそうです。でも、見る方向を変えてみませんか。
もしこの地上が平らで山が無かったらどうでしょう。そこには一面陽が当たり、陰陽の区別がなくなります。現実には、地球は丸いですから必ず影は出来るのですが、もう少し小さい範囲で考えています。
つまり、高い山脈がつらなり、そこに陽のあたる陽と、陽のあたらない陰とが出来ます。そのため、高気圧・低気圧が出来ると考えられます。そのため雨が降ったりするのです。
これは陰陽の世界から見た考え方と言えます。
東洋医学(漢方)も東洋思想の一部ですから、このように西洋的な見方とは異なる方向から物事を見ています。
わかりにくいかも知れませんが、これから少しずつお話していきたいと思っています。少しでも鍼灸(経絡治療)の考え方を知っていただければと思います。





私の治療室から (その3)
高校生のけがと回復の遅さについて

当院も運動部に入っている高校生の捻挫や肉離れ等の治療に当たらせてもらう機会がありますが、その中で特に女子高校生について感じたことから、お話させていただきたいと思います。
以前、高校の運動部を指導しているコーチから聞いたことがあります。「最近の高校生は、昔に比べて簡単にけがをするんです」と。
長年指導されてこられた方がそう感じられておられる。実際にどうもけがが多いようです。
以前と何かが変わってきているんでしょう。ここで、その検証は私の能力不足のため、またの機会に譲ることとします。ここでは実際に治療させていただいた例から、問題点を挙げてみたいと思います。
前述しましたが、当院へは“ひざの痛み・捻挫・肉離れ・肩の痛み等”で来院されます。痛みの程度や発症してからの日数等でおおよその目途が立ちますが、こちらの予想に反して回復の遅い方が圧倒的に多いのです。それらの方々に色々と尋ねてみますと、大体の方が“生理不順・便秘・冷え”を訴えます。
生理不順にしても単に少し期間が延びる程度ではなく、何ヶ月も生理が無い。便秘でも1週間も出ない。しかも、お腹が張ってこないので気にならない。足は冷えて湿っている状態。
こんな体の状態では、しっかりと免疫系が働けないでしょう。
体を作りあげて行く大事なこの時期にどうしてなのでしょう。特に女性ホルモンがピークを迎えるこの時期が大切なはずです。しかし、ダイエットのためか、食事の制限や冷え等によってピークに至る前に止まってしまうと聞いたことがあります。
一人の鍼灸師として心配しています。見えるものに目を向けがちになりますが、特にこの年代はそうなりがちですが、どうか目に見えないものも大切にしてください。



私の治療室から(その2)(2005年 6月)
冷えについて

前回冷えと食事について書きましたが、食事だけで簡単に解決できる問題ではないでしょう。そこには様々な要因が複雑に絡み合っているといえます。ただ、その中で食事の占める割合は大きいといえるでしょうが。
今回は、現在実際に問題となっている事柄を挙げつつ、冷えについて考えて行きましょう。
最近話題になっていることに、小児の低体温症の問題があります。
小学生の4人に1人の割合で、低体温(36度以下)の子供がいるそうです。小学生といえば、一般的に元気いっぱいで、体温も高いと思ってしまいますが。しかし、低体温の子供たちはからだがだるく、疲れていて朝もすっきりとは起きれないそうです。
元気いっぱいであるはずの子供たちに、何が起きているのでしょうか。
更に、この状態がすすむと、次なる問題が起きてきます。「小児慢性疲労症候群」といわれる状態です。こう呼ばれている人たちは、体温が低く、常に体がだるく、学校や仕事に行くことができなくなっています。
通常、人の体温の変化は、朝低く、昼にかけて一番高くなり、夕方にかけ徐々に下がり、夜に体温が下がり眠りにつくようになっています。しかし、「小児慢性疲労症候群」の人は、昼にかけて体温が上がらず、常に体温の低い状態だそうです。そのため、眠りも浅く疲れが抜けないようです。
このように、「冷え」は単に冷えていると簡単に済まされないこともあるのです。
では、何故「冷え」は悪いのでしょうか。
これから極端な話になりますが、その方がわかりやすいので、忍耐を持って読んでください。
女性の方は、実体験からお分かりになるでしょうが、高温期と低音期とで体調に差が出ることはお分かりいただけると思います。
例えば、体温が36.5度から35.5度に下がったとしましょう。当然、手・足が冷たくなります。つまり、36.5度で順調に回っている血液が、体温が下がることにより、少し粘度を増し、今まで持っていた力が低下することを意味します。そのため、内臓の諸機関の能力が下がり、体に変調が現れてくるようになります。
煮魚の汁が気温の低下で固まってくるようになりますね。これは、極端な話ですが、似たようなことが、体の中で起きていると思ってください。
つまり、このことにより更に体は、冷えに傾いていきます。その結果、女性の場合では婦人科系の疾患を発症しやすくなっていきます。子宮内膜症・卵巣嚢腫・子宮筋腫・不妊症等、冷えによって引き起こされる確立が高くなります。
単に「冷え」は、手・足が冷たいだけでなく、体の諸機関に悪影響を与えていると考えてください。その典型的な例が、先に揚げた小児の低体温症であり、小児慢性疲労症候群と言えるでしょう。
私は、脅している訳ではありません。「冷え」について、再考察していただきたいのです。
そして、体を冷やさないように、食事や生活習慣を考え直す機会としていただければ幸いです。


私の治療室から 「その1」(2005年 5月)
冷え性と食事について

私の治療院に来られる方の多くが冷えておられます。その冷えによって、様々な症状を引き起こしておられると思われる方々が大半です。例えば、不妊症の方、生理不順(無月経等)の方、肩こり・腰痛の方等です。これらの症例は、日を改めて書くこととし、この中では、日々の臨床の中で、私が感じたことや、実際にアドバイスしたこと等を中心に書いてみます。
私自身、専門的に食事について学んだことはありませんが、私自身難病に冒され、病気克服のため医師の指示の元、玄米菜食と運動療法を数年間やってきたことや、この仕事を始めて学んだこと等を中心にアドバイスさせて頂いています。
例えばこんな会話がありました。
「朝は余りお腹がすかないので、いつも果物とゼリーだけ」「朝は時間もないし、余り食べたくないからヨーグルトだけ」
ここで何が問題でしょうか?
まず第一に、朝起きてお腹がすいていないこと。第二に、お腹がすいていないため、ノド通りの良い果物やゼリーを食べていること。第三に、ノド通りの良いものは、比較的冷たいものをであること。最後に、あまりこの状態を悪いと感じていないことです。ですから、繰り返し続けて行くことで更に、冷えた体になっていきます。
私としては、これを改善してもらいたいため、「こういう食事は、体を冷やしていくだけですよ。和食を中心に食べてください。主食であるご飯をしっかり食べ、副食のおかずを少なめに。野菜は生でなく、温野菜にしてください。粗食に心がけることが大切です」と、話します。
 
また、こんな話もあります。
妊娠後期で、逆子がなおらず当院に来られた方です。「お腹がすくので、良くラーメンやケーキを食べています。食事のことで注意されたことはありません」とのことです。
これはどこが悪いのでしょうか?
ラーメンは、陰性の食べ物です。ケーキ等甘みのものは、体を冷やす方向に働きます。つまり、いずれもこの食べすぎは、体を冷やし、逆子になりやすい条件を作り出しています。
僅かの例でしたが、最近の傾向として、このようなケースが多いような感じです。和食から欧米の食生活に大きく変わった昨今、栄養学的にはすぐれているかも知れませんが、それを受け入れる体のことはどう考えているのでしょうか。
現在、栄養学的には評価され、好まれている食品も多くあります。でも漢方的な概念から捉えたらどうでしょうか?つまり、陰陽から捉えたらかわるかも知れません。あまり難しいことはやめにしますが(私自身あまり詳しくありません)。
わかり易い例からあげます。暑いところで取れるバナナは栄養価のすぐれた果物です。でも、良く考えてみましょう。暑い地方で取れると言うことは、暑くなった体を冷やす方向に働きかけるものが必要です。その意味で、バナナは最適と言えるでしょう。
つまり、暑い地方の食べ物は、それを食することで体を冷やすのです。日本における夏の水羊羹、インドにおけるカレー等も、その代表例といえるでしょう。いずれも体を冷やす方向に働いています。
今、更に冷たい飲み物が一年中愛飲されています。このように、今、体を冷やす働きの強い食品が好まれて、多く取られています。
私自身、あまり大きなことを言えるようなものではありませんが、実際、治療にあたりながら、今まで培われてきた和食の大切さを知っていただきたく、話しています。是非これを機会に、少し飲食について考えていただければ幸いです。
例題として、極端な例を出しましたが、でも、こういう方も多くおられます。「何故冷えは悪いか」は、後日書こうと思いますが、食事の仕方によって、体は大きく変わってきます。特に小児にとっては、大きな問題となりえます。
忙しい日々ではあると思いますが、何かのきっかけとなりますれば幸いです。
最後になりますが、食べすぎも体を冷やしていきます。ご注意ください。


温穂堂 名称の由来 (2005年4月)
温穂堂とは、古代中国、元の時代(日本では鎌倉時代)にあった、漢方医学の四大学派のひとつ、「温補派」から取ったものです。
その当時、大きく二つに分けられ、一つは、強い薬を用い、吐かせたり、汗をかかせたりで強制的に病を治そうとする学派。もうひとつは、温和な薬を用い、体の中を暖めながら治していく学派です。後者に、「温補派」が属します。
この名前からもイメージされるように、温和な刺激で、劇的に治癒させると言うよりも、体の芯から温め、じっくり治して行こうとするものです。
この考え方が、私の目指す治療方針に合致し、
さらに、経絡治療のイメージとも合うために、
「温穂堂」と付けました。
つまり、慢性病になればなるほど体は冷え、また、多くの病が『冷え』によって引き起こされています。ですから、体の芯から温めて行く必要があるのです。
『経絡治療』はまさに、微鍼を用いて、痛みを与えず、体の芯から温め、免疫力を引き上げて病を治していくものですから、「温補派」に通じるところがあるのです。
私もこの「温補派」の精神を引き継ぎつつ、少しでも苦しんでおられる方々の、お役に立ちたいと願っております。
ちなみに、私の妻は「温子」ですが、たまたま一致したものです。妻を知っている方々からは、妻の壱字を取ったのではと、言われましたが。
少しはあるかも知れませんね。




予防医学としての鍼・灸(経絡治療) (2005年4月)
予防医学の大切さが説かれて久しいですが、今日、定期健診等の実施で大きな成果をあげていると言えます。しかし、私自身鍼灸の仕事に携わっていて、いつも疑問に思うことがあります。
それは、当院に来られる患者さんの中に、具合が悪いのに検査を受けても「異常なし」と言われ、あまり治療を受けられない人が多いと言う事です。それはどうしてなんでしょう。
私の治療例から、次のような方が居られましたので、参考にあげてみます。
中学2年生の女子生徒。
毎朝学校に行く時間になると、お腹が痛み、強い嘔吐感を感じます。そのため、しばしば学校を休むことになりました。心配になり、内科を受信。
検査するも異常なく、「気のせいだよ」と言われたとか。
それでも、症状は続き苦しいため、紹介を受けて当院に来られました。早速診脈・腹診。お腹はカチカチに硬く、胃の上を軽く押すと苦痛に顔をゆがめます。明らかに変調をきたしています。
この方は、治療の結果症状はなくなり、元気になりました。
ここで『予防』と言う意味合いから、考えて見ましょう。
東洋医学には『未病を治す』と言う言葉があります。病になっていないものを、どうして治せるのか?と言われるかも知れませんね。そうかも知れません。現代医学的見方であれば。しかし、そうではないのです。
東洋医学では、体は次の「五つの系統」によって作られ、支配されていると考えます。つまり、
「肝臓系統(肝臓・胆嚢)」 「心臓系統(心臓・小腸)」 「脾臓系統(脾臓・胃)」 「肺臓系統(肺・大腸)」 「腎臓系統(腎臓・膀胱)」です。但し、脾臓は、現代医学で言う脾臓とは違います。これらの「五つの系統」が、バランスを保って、病にならぬように体を守っていると考えます。ですから、この系統のアンバランスは、病を引き起こしていくと考えられます。
特にバランスを崩している「系統」の支配領域に、病的な反応が現れてきます。
私たち経絡治療家は、このアンバランスの状態を脈診・腹診等で見極め、鍼灸によってバランスのとれた状態に戻し、治癒させていきます。
この意味で「病に至る前に、事前にその変調を見極めて、治してしまう」と言うことになります。
ですから『予防』と言うことから考えますと、変調を取り去ると同時に、「どこの変調」か、生活習慣の指導等、アドバイスすることにより、さらに病に至るのを防ぐことになります。
「未病を治す」と言う東洋医学、なかんずく経絡治療を受けることによって、ご自分の体の状態を知り、健康を維持することも大切ではないでしょうか。





花粉症について  (2005年3月)
今年の花粉の量は、昨年の30倍 80倍とも
いわれています。花粉症の方にとっては、この
数字を聞いただけでもう症状が強くなっているかもしれません。
どうしたら軽くすごせるのでしょうか。そして花粉症を治せるのでしょうか。
アレルギー症にたいして一般的にいえることですが、生活習慣に問題点があるといえます。
私たちの生活は、夏涼しく冬暖かく、しかも
一年中つめたい飲み物を飲んでいます。つまり、
厳しい環境の中にはおらず、体が四季毎に強く対処しなくてすんでいます。
このことは、強いストレスに会わないため、
副交感神経優位の状態になっていることを意味します。つまり、過敏に反応を起こす状態を作っています。さらに、冷たい飲み物の多飲は体を冷やし、免疫力を下げてしまいます。
生活習慣を改め、経絡治療により免疫力を引き上げ、今年の花粉の時期を一緒に乗り越えて行きましょう。